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【はじめてガイド】歌舞伎用語解説⑥「歌舞伎の幕」

歌舞伎の公演で、客席に入ってまず目に入るものといえば、歌舞伎のシンボルカラーにもなっている三色の幕。

定式幕


この幕を見ると「歌舞伎を観に来たなー」と実感される方も多いかと思いますが、あの幕を定式幕と言います。
「定式」とは決まった形式のことで、「いつものお決まりの幕」というような意味です。


もともと、初期の歌舞伎では、幕というものはありませんでしたが、だんだんとお芝居が複雑になり、一場面では完結できなくなってきました。
お客様の目につかないよう場面を転換するために誕生したのが幕です。

歌舞伎お決まりの定式幕といえば、黒、柿色、萌葱色(濃い緑色)の三色を思い浮かべると思いますが、実は一種類ではないということをご存知でしょうか?
江戸時代、定式幕が使えたのは幕府に公認された芝居小屋だけの特権でした。
幕府公認の芝居小屋、中村座・市村座・森田座で、それぞれ異なる配色の定式幕を使っていました。

市村座

市村座

黒を中心に左に柿、右に萌葱。
国立劇場が市村座と同じです。

森田座

森田座

市村座と逆で黒を中心に左が萌葱、右が柿色。
歌舞伎座がそうですね。

中村座

中村座

黒を中心に左が柿、そして右は萌葱ではなく白が使われます。


定式幕のほかにも、歌舞伎では様々な幕が使われます。

浅葱幕

淡い水色の幕です。
この浅葱幕などは、幕を吊って舞台を覆った状態から、「チョン」という柝の音を合図にぱっと幕を落とす「振落し」という演出でも使われます。
それまで幕の向こうに隠れていた俳優や舞台装置が一瞬にしてお客様の目の前に現れる、歌舞伎の印象的な演出効果のひとつです。
逆に、幕で舞台を覆い隠すのが「振かぶせ」。
定式幕を閉じずに舞台転換をすることができます。

浅葱色


道具幕

場面の転換に使われる幕です。
大道具の舞台セットの代わりになるような、舞台背景が描かれた幕もあります。
山や浪、建物の塀や街道の風景など、そのお芝居の場面に合わせて様々なものが描かれます。

消し幕

舞台全体ではなく一部分だけを隠す幕です。
舞台上で死んでしまった人物を隠してお客様に見えないようそっと退場させたり、人物が中央のせりから上がってくる前に見えないように隠したりするのに使います。
隠すための幕で、幕の色は、歌舞伎では「見えない」というお約束になっている「黒」が基本ですが、舞台の様式に合わせて赤い色の幕を使って隠したりするのも歌舞伎の面白いところです。

様々な幕が使われているので、注目してみると、また新しい歌舞伎の見方ができるかもしれません。

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