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【初心者さん向け!演目ざっくり紹介】10月歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」公演

皆様こんにちは。
皆さまの歌舞伎観劇の第一歩をサポートする「歌舞伎はじめてガイド」

歌舞伎を観てみたいけれど、どこから情報を得れば良いのかわからない・・・歌舞伎の演目名がずらっと並んでいても、どんな内容なのかがわからなくて困る!・・・そんな初心者さん向けの「演目ざっくり紹介」、こちらは2024年10月歌舞伎座編です。


10月歌舞伎座チラシ

 10月は、昼の部と夜の部でがらりと雰囲気の変わる演目ラインアップです。さっそく、10月の演目についてご紹介していきたいと思います。


《昼の部の演目》『俊寛』『音菊曽我彩』『権三と助十』


昼の部まずは『俊寛』。

かの有名な近松門左衛門が作った、古典の名作芝居です。
平清盛がいちばんの権力者だった時代に、平家打倒の陰謀を企てた罪で都から遠く離れ「鬼界ヶ島(硫黄島)」に島流しにされた俊寛という人物の話です。ともに島流しにされた仲間たち、島で出会った娘、そこへ都からの船がやってくるところで物語が大きく動きます。歴史的なできごとをもとにしているといっても、日本史はあんまりわからないからなぁ・・・と心配する必要はありません。描かれるストーリーは、感情移入や共感をしやすい人間ドラマです。
心が動かされるお芝居で、「さすが名作だなぁ」と観るたびに思います。


☆歌舞伎好き社員・藤之森のトークでも、『俊寛』をおすすめしています。こちらもぜひチェックしてみてください。


そして、『音菊曽我彩』。

こちらは、「曽我兄弟の仇討ち」という実際にあった歴史上のできごとを題材にしたお芝居です。父親を殺した敵・工藤祐経に仇討ちをするという仇討ち事件は、日本三大仇討ちのひとつと言われていて、江戸時代には誰もが知っている話でした。いまは歴史好きか歌舞伎好きしかぴんとこないかもしれないですが・・・
歌舞伎には、この「曽我兄弟の仇討ち」を題材にした演目がたくさんあって、「曽我もの」と呼んだりします。有名な『助六』という演目も、同じ題材から派生した物語です。こちらは、今回の上演のために新しく作られる作品ですので、またいっぱいある「曽我もの」の仲間がひとつ誕生するということになります。

主人公は、曽我十郎と五郎という兄弟。今回は、十郎は一万、五郎は箱王という成人前に名乗っていた名前で登場するようです。お兄さんの曽我一万を尾上右近さん(若手のホープ)、曽我箱王を尾上眞秀さん(寺嶋しのぶさんの息子さん、12歳!)が演じます。おふたりは、先日、尾上右近さんの自主公演では親子役で一緒に舞台に立っていました。息のあったコンビネーションで、今度の兄弟役も楽しみです。



最後は、『権三と助十』。

こちらは、江戸時代の庶民の暮らしが描かれたお芝居です。タイトルの通り、権三さんと助十さんという同じ長屋に住むふたりが出てきます。
ふたりの職業は駕籠かき。駕籠は江戸時代の人たちの移動手段のひとつで、いまで言うタクシーのような感じ・・・とすると、ふたりはタクシー運転手みたいな感じでしょうか。そうすると、いろんなお客を乗せたり、いろんな場所に行くことになりますね。

「ある事件について解決する」という推理ドラマのようなストーリーが展開しますので、あまりここでは詳しくお伝えしないことにします。が、時代劇ドラマのような雰囲気で、せりふもそんなに難しい言葉がたくさん出てくるわけではないので、初心者の方もとても見やすいお芝居だと思います。



《夜の部の演目》『婦系図』『源氏物語 六条御息所の巻』

夜の部の演目ひとつめは『婦系図』。

こちらの演目は、歌舞伎ではなく、「新派」で上演されてきた作品です。新派というのは、古典の歌舞伎に対して「新しい演劇」ということで明治時代にはじまり、現在に至るまで劇団としても続いています。
新派で『婦系図』を上演した際に、今回出演する片岡仁左衛門さんと坂東玉三郎さんもそれぞれ別々の公演で出演してはいますが、この作品でのふたりの共演は初めて。仁左衛門さんと玉三郎さんといえば、50年以上にわたりいくつもの共演をしてきた名コンビ。「にざたま」の愛称で、圧倒的な人気を誇っています。そんな「にざたま」の新しい共演作品が見られるなんて・・・!しかも、この作品の中のふたりの(役柄での)関係性は、「恋人同士」です!長年のファンも心待ちにしていることでしょう。

この作品の作者は泉鏡花。玉三郎さんはこれまでも泉鏡花の作品をいくつも歌舞伎として上演してきました。鏡花作品への思い入れも強い玉三郎さんが、仁左衛門さんと一緒にどんな作品を見せてくださるのか、期待が高まります。


ふたつめは、『源氏物語 六条御息所の巻』。

現在の大河ドラマ「光る君へ」も紫式部の物語ですので、まさにいま旬な話題の「源氏物語」です。

源氏物語は確かに有名ですが、全部で54帖からなる長い物語で、「すべて読破しました」という人は少数派かと思います。ただ、六条御息所と葵の上が出てくる場面はとくに有名なので、なんとなく物語の内容は知っているという方も多いのでは。今回はそんな有名場面を新たに歌舞伎にした作品です。こちらにも、女方の最高峰である坂東玉三郎さんが六条御息所としてご出演。光源氏には、美しい貴公子役がぴったりな市川染五郎さん。葵の上も、女方としてめざましい活躍ぶりの中村時蔵さん。美の競演による三角関係に目が離せない舞台になりそうです。

夜の部の演目はふたつとも、古典のいわゆる「歌舞伎らしい歌舞伎」とは一線を画したようなお芝居になると思いますが、歌舞伎以外の演劇を普段ご覧になっているような演劇ファンにおすすめです。

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以上、10月歌舞伎座演目のざっくり紹介でした。皆様の「歌舞伎はじめ」に、少しでも参考になりますように!(編集A)


★歌舞伎座の10月公演情報はこちらから↓↓↓

 

 

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