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【初心者さん向け!演目ざっくり紹介】9月歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」公演

皆様こんにちは。
皆さまの歌舞伎観劇の第一歩をサポートする「歌舞伎はじめてガイド」

歌舞伎を観てみたいけれど、どこから情報を得れば良いのかわからない…歌舞伎の演目名がずらっと並んでいても、どんな内容なのかがわからなくて困る!・・・そんな初心者さん向けの「演目ざっくり紹介」、こちらは2023年9月歌舞伎座編です。

9月歌舞伎座チラシ

 

9月の歌舞伎座は、二部制(11:00~/16:30~)で、よく上演される人気演目がたくさん並びました!

ちなみに、公演名に「秀山祭(しゅうざんさい)」とありますが、「秀山」というのは、初代中村吉右衛門が名乗っていた俳名(俳句を嗜むときの別名)。初代吉右衛門の功績を称えて、2006年からほぼ毎年、ゆかりの演目を上演してきました。その秀山祭の中心にいらした二代目吉右衛門さんが亡くなられてから、11月で早2年が経とうとしています。今回は、二代目の吉右衛門さんの三回忌追善の興行でもあります。

では、さっそく、演目についてご紹介していきたいと思います。

 


《昼の部の演目》『祇園祭礼信仰記 金閣寺』『土蜘』『二條城の清正』

ひとつめの演目は『祇園祭礼信仰記 金閣寺』。

舞台は、あの京都の金閣寺です。室町時代に金閣寺を造った人といえば有名な三代将軍の足利義満ですが、時代は下って十三代将軍の足利義輝の時代。
義輝の家臣の中に、天下を乗っ取ろうともくろむ大悪人の松永大膳という人物がいます。今回上演される金閣寺の場は、まさに天下乗っ取り作戦決行中の松永大膳を中心に物語が進んでいく場面です。松永大膳を演じるのは、中村歌六さん。最近、人間国宝になられた(祝!)、実力派のベテラン俳優さんです。歌六さん演じるスケールの大きい迫力ある悪役は、ぜったい格好良いです。
ヒロイン的な役の雪姫は、注目株の若手女方、中村米吉さんと中村児太郎さんがWキャスト(日替わり)で演じます。女方の役の中でもとくに大きな役と言われる雪姫を演じるおふたりにも注目です。(ちなみに米吉さんは歌六さんのご子息!)

7月の新作歌舞伎『刀剣乱舞』から歌舞伎に興味を持ったという方・・・もうお気づきかと思いますが、『祇園祭礼信仰記』は、刀剣乱舞歌舞伎の物語と同じ時代(永禄の変)を扱っています。つまり、松永大膳のモデルは、松永弾正久秀。『刀剣乱舞』では忠義をつらぬく家臣として描かれていた松永弾正でしたが、この作品では大悪人。永禄の変を起こした謀反人というイメージで作られた、また別の物語です。こちらには足利義輝は出てきませんが、義輝の母、慶寿院が登場します。


ふたつめは、『土蜘』。

こちらは、源頼光にまつわる伝説のひとつ、大蜘蛛退治をもとにした舞踊劇です。同じ題材のお能の作品をもとにしているので、お能の舞台装置のようなシンプルな舞台美術の中、歌舞伎俳優の舞踊による身体表現を堪能できます
さらに、舞踊劇なので、音楽にもご注目。音楽はお能とは違っていて、三味線と唄の「長唄」音楽です。
静かに怪しい雰囲気で展開する前半と、激しい戦いの場面の後半・・・この演目は、音楽や登場人物の見た目、動きなど、ひと作品の中で色んな要素ががらりと変わります。見どころが満載です。

戦いの場面で源頼光が使う名刀といえば、『刀剣乱舞』のキャラクターでもお馴染み、膝丸です!ここではもちろん刀剣男士の姿ではなく、刀の姿での登場ですが、「蜘蛛切丸」と名を変えて、土蜘蛛の精と戦います。名刀・膝丸=蜘蛛切丸の活躍をどうぞご覧ください。

・・・ということで、昼の部は、刀剣乱舞から歌舞伎に興味を持った方におススメのラインアップが揃っています。(『土蜘』には、同田貫正国を演じた中村鷹之資さんも出演しますので!)


そして、3つめが『二條城の清正』。

主人公は、歴史にも名を残す武将・加藤清正。豊臣秀吉が亡くなったあとは、秀吉の息子・秀頼に仕えます。この作品では、秀頼のことを息子のように思いやる加藤清正の姿が描かれますが、その清正と秀頼を、今回は実の祖父(松本白鸚)と孫(市川染五郎)が演じることになります。

「御座船」の場面の前にも二條城の場面などがあるのですが、今回は上演されません。「御座船」の場面のみをご覧いただきます。しかし、なんといっても清正を演じるのは名優の松本白鸚さん、そして秀頼を演じる染五郎さんもまだ18歳ながら舞台経験もどんどん積み重ねている注目株。短い場面の一瞬でも、その関係性にぐっとくるような演技を見せてくれることと思います。

 

《夜の部の演目》『菅原伝授手習鑑 車引』『連獅子』『一本刀土俵入』

夜の部のひとつめは『菅原伝授手習鑑』の中から、「車引」の場。

『菅原伝授手習鑑』といえば、歌舞伎・文楽の三大名作のひとつ。そして、「車引」の場面は、有名な演目の中でも特に有名な場面。これぞ歌舞伎!というイメージにぴったりはまるような、見得のポーズや隈取など、歌舞伎独特の演出がもりだくさんです。歌舞伎の説明が教科書に載る時にピックアップされるような代表的な演目。
ストーリーは前後の物語がないとちょっとわかりづらいですが、「兄弟が敵味方にわかれて対立するはめに…!ラスボスも登場!」みたいな感じです。(きちんとした解説は劇場のイヤホンガイドで・・・)
上演時間も30分程度と短くて観やすいです。


続いては『連獅子』。

こちらも、歌舞伎の代表的な演目のひとつですが、こちらは舞踊です。
赤と白の長い髪をぶんぶん激しく振り回す歌舞伎作品、なんとなくどこかで見たことがある方も多いのでは?
赤と白の髪を振るのは、「獅子」というライオンに似た空想上の霊獣のことです。この獅子の踊りは実際の舞台で観るととても迫力があって格好良い!音楽もどんどん激しくなり、日本の音楽ってこんなに激しいのか…!と、伝統音楽のイメージもくつがえるかもしれません。
この演目は、特になにも考えずに見ても、動きや音、すべてに釘付けになるはず!

 

そして最後が、『一本刀土俵入』。

こちらは、一転変わって、「歌舞伎らしい演目」というよりは、ドラマの時代劇を見ているような感覚で観られるお芝居です。作者は長谷川伸。昭和になってから作られた作品です。
「土俵入」とありますが、相撲取りとして成功するという夢を道半ばで諦めることになってしまった駒形茂兵衛(こまがたもへえ)という男が出てきます。その茂兵衛さんが出会うのが、取手(茨城県)にある宿場で酌婦として働くお蔦さん。この二人がメインの登場人物です。

偶然出会った人と人との関わり合い、義理人情に、胸が温かくなる物語。「土俵入」という言葉が最後にとてもぐっとくる形で響く、良い芝居なんです・・・もうこれはとにかく見てください。

 

ということで、夜の部は歌舞伎ビギナーの方にはもってこいの演目ぞろいです!

 

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以上、9月歌舞伎座演目のざっくり紹介でした。皆様の「歌舞伎はじめ」に、少しでも参考になりますように!(編集A)


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