【初心者さん向け!演目ざっくり紹介】2月歌舞伎座「猿若祭二月大歌舞伎」公演
皆様こんにちは。
皆さまの歌舞伎観劇の第一歩をサポートする「歌舞伎はじめてガイド」。
歌舞伎を観てみたいけれど、どこから情報を得れば良いのかわからない…歌舞伎の演目名がずらっと並んでいても、どんな内容なのかがわからなくて困る!・・・そんな初心者さん向けの「演目ざっくり紹介」、こちらは2024年2月歌舞伎座編です。
2月の歌舞伎座は公演タイトルの前に「十八世中村勘三郎十三回忌追善」とあります。2012年に57歳という若さで亡くなった十八代目中村勘三郎さんの十三回忌の公演で、ご子息の中村勘九郎さんや中村七之助さん、そしてお孫さんの中村勘太郎さん、中村長三郎さん・・・と、中村屋ファミリーが揃って出演します。上演される演目も、勘三郎さんにゆかりのある演目が並び、想いを馳せながら興行する一か月となります。
では、さっそく、演目についてご紹介していきたいと思います。
《昼の部の演目》『新版歌祭文 野崎村』『釣女』『籠釣瓶花街酔醒』
最初の演目は、『新版歌祭文 野崎村』。
とても平たく言ってしまうと、「三角関係のお話」です。田舎娘のお光ちゃんと、お嬢様育ちのお染ちゃんというふたりの娘さんにアプローチされる、久松くんというイケメン青年が出てきます。久松くんは、お光ちゃんの家の養子で、お光ちゃんの許嫁です。ところが、お染ちゃんの家に奉公のお仕事に出ているうちに、お染ちゃんとも恋仲になってしまったのです。
今回は、イケメン久松を、「美しい女方」としても人気の中村七之助さんが演じます。麗しい久松になるはず。お光ちゃんとお染ちゃんは、期待の若手女方ふたり、中村鶴松さんと中村児太郎さんが演じます。タイプの違うふたりの娘のキャラクター。歌舞伎好き同士の会話で、「お光派?お染派?」という話題で盛り上がったこともあります。
三角関係といっても、「恋の火花がバチバチ!」というよりは、切ない展開のストーリーが待っています。重厚な義太夫節という語りと三味線で進行する、古典の名作です。
そして次は『釣女』。
こちらは、何も考えずに見ても、わかりやすく楽しめる舞踊劇です。
というか、むしろよく考えるとコンプライアンス的にNGでは・・・という内容なのですが、古典作品のおおらかさで、嫌な感じなく笑える作品になっています。
狂言を元にした舞踊劇で、頻繁に上演されている人気演目のひとつ。お殿様とそのお付きの者が、嫁探しをするという内容で、ドタバタコメディー的な雰囲気の芝居。それを踊りで見せるのが、歌舞伎ならではで楽しいところです。
昼の部ラストが、『籠釣瓶花街酔醒』。
昼の部のメインディッシュとも言えるお芝居です。十八代目中村勘三郎さんもたびたび主人公の佐野次郎左衛門を演じて、当たり役にしてきました。
今回は、勘三郎さんの息子である勘九郎さんが、佐野次郎左衛門を演じます。田舎者の次郎左衛門は、物語の前半と後半では雰囲気ががらりと変わる役で、説得力を持たせる芝居のうまさが必要ですが、勘九郎さんの次郎左衛門はぜったいにハマるはず。
そして、次郎左衛門が惚れてしまう遊女の八ツ橋を弟の七之助さんが演じます。八ツ橋は吉原の廓でも評判の遊女。こちらの芝居では七之助さんの女方の美の魅力(もとい、魔力?)を存分に堪能してください。さらに、八ツ橋の恋人・繁山栄之丞の役は、なんと、片岡仁左衛門さん!「にざ様」と呼ばれる、二枚目俳優のレジェンドです。勘三郎さんの追善ということで、ご縁のあった俳優さんたちがたくさん出演する豪華配役が実現しました。
☆歌舞伎好き社員・藤之森のトークでも、『籠釣瓶花街酔醒』をおすすめしています。こちらもぜひチェックしてみてください。
《夜の部の演目》『猿若江戸の初櫓』『義経千本桜 すし屋』『連獅子』
まずは、『猿若江戸の初櫓』。
こちらは、中村勘三郎家(中村屋)ゆかりの舞踊です。
初代の中村勘三郎が立ち上げた「猿若座」というのは、のちの「中村座」のこと。こちらの舞踊劇では、猿若座誕生秘話のような物語が展開します。
そして今回は、中村屋の始祖ともいえる猿若を、現在12歳(公演中の2月22日がお誕生日!)の中村勘太郎さんが演じます。12歳にして立派な役者ぶりに定評のある勘太郎さん。立派に猿若一座のリーダーをつとめる姿をお見逃しなく!
そして、『義経千本桜 すし屋』。
有名な歌舞伎の三大名作のひとつ『義経千本桜』から、「すし屋」が舞台になった一場面です。「いがみの権太」というあだ名がついた、周りの人たちから「性格がねじまがっている」と言われてしまうような権太(ごんた)という男が主人公です。今回は、生前の勘三郎さんとはたびたびバディを組んで芝居をしていた仲であり、そして義理の弟でもある中村芝翫さんが権太を演じます。
いまから270年以上前に作られた古典作品ですが、家族への情や人の想いというものは変わらないものなのだなと感じる、とてもぐっとくるお芝居です。名作はやっぱり脚本の力もすごい。
そしてラストは『連獅子』。
紅白の長い毛を振り回す、歌舞伎の有名な「毛振り」が見られる舞踊の演目です。
親獅子が白、仔獅子が赤の毛を振りますが、親子の獅子を実際の親子で演じることも歌舞伎界ではよくあります。2021年2月には、勘九郎さんと長男の勘太郎さんが連獅子を親子で踊っていましたが、今回は次男の長三郎さんが仔獅子役。長三郎さんは10歳ですが、小さい頃から大物感ただよう雰囲気を醸し出し、舞台の場数も数々踏んでいます。きっと連獅子でもたくさんの客を釘付けにするのでは。踊りの上手さに定評のある父親・勘九郎さんと踊る連獅子、今からとても楽しみです。
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以上、2月歌舞伎座演目のざっくり紹介でした。皆様の「歌舞伎はじめ」に、少しでも参考になりますように!(編集A)
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