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【初心者さん向け!演目ざっくり紹介】9月歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」公演

皆様こんにちは。
皆さまの歌舞伎観劇の第一歩をサポートする「歌舞伎はじめてガイド」。

歌舞伎を観てみたいけれど、どこから情報を得れば良いのかわからない…歌舞伎の演目名がずらっと並んでいても、どんな内容なのかがわからなくて困る!・・・そんな初心者さん向けの「演目ざっくり紹介」、こちらは9月歌舞伎座編です。

 

9月歌舞伎座チラシ

9月の歌舞伎座公演は、公演名に「秀山祭」とあります。「しゅうざんさい」と読みます。
さらに、「二世中村吉右衛門一周忌追善」とありますが、追善興行というちょっと特別な興行となっています。

☆歌舞伎好き社員・藤之森の今月のトークでは、「秀山祭」とは何か?…など、お話ししています。

(※ふだんは、初心者向けに藤之森のおすすめ演目をお話しするトークですが、「秀山祭」への思い入れが強すぎて演目のおすすめは「全部!」になってしまったようです。ご容赦ください)


では、こちらの記事ではさっそく演目ごとにご紹介していきたいと思います。 

《第一部の演目》『白鷺城異聞』『菅原伝授手習鑑 寺子屋』

第一部、まずひとつめは『白鷺城異聞(はくろじょうものがたり)』。タイトルに「白鷺城」とあるのは、姫路城のことです。
白鷺のように美しい姫路城の天守閣には妖怪が住んでいましたが、かの有名な剣豪・宮本武蔵が退治したという伝説があるそうです。その伝説などを物語に織り込んで作られた作品とのこと。「松貫四 構成・演出」と書いてありますが、「松貫四(まつかんし)」というのは、二代目中村吉右衛門さんの筆名(ペンネーム)です。最初に少し書きましたが、今回は、惜しくも昨年亡くなられた名優・吉右衛門さんを追善する公演ですので、吉右衛門さんご自身が手がけた作品を上演するという趣向です。

この作品は、舞台になった姫路城で一度上演されたことがありますが、歌舞伎の本公演としてははじめての上演です。姫路城での上演は観られていませんが、踊りや筝曲の音楽も入るようなので、短編小説のような美しい舞台になるのではないかと予想しています。

二つ目の演目は、『菅原伝授手習鑑 寺子屋(すがわらでんじゅてならいかがみ てらこや)』
こちらは、歌舞伎の三大名作のうちのひとつ『菅原伝授手習鑑』という作品の、とても人気のある有名な場面「寺子屋の場」です。なぜこの芝居が人気なのかは「観ればわかる!」と言ってしまいたいくらい、ストーリー構成がしっかり練られていて、とても濃い人間ドラマが展開します。
ただちょっと、長いお芝居の一場面なのと、江戸時代の倫理観で芝居が進むので、初心者にはすぐに理解するのは難しいところもあるかもしれません…。ですが、そこはイヤホンガイドがしっかりサポートしますのでご安心を。文句なしの「名作」芝居をぜひ一度はご覧頂きたい!です。

《第二部の演目》『松浦の太鼓』『揚羽蝶繍姿』

第二部は、まずは『松浦の太鼓』
こちらも人気が高く、たびたび上演されている作品です。主君の仇を討った四十七士で有名な「赤穂事件」「忠臣蔵」を題材にした作品のひとつですが、こちらはサイドストーリー的なお話。主人公は、赤穂浪士の討ち入りをひそかに応援するお殿様・松浦鎮信さん。いよいよ討ち入りか…?という場面では、心をウキウキとさせる様子を隠せない、なんともチャーミングな松浦の殿様。殿様と一緒に観客も気分が高揚し、ぱーっと明るい気分になるようなお芝居です。
今回、松浦の殿様を演じるのは松本白鸚さん。ぐっと惹きつけるようなドラマチックなお芝居もお得意ですし、とても愛嬌のあるお殿様を見せてくださるのではないかと楽しみです。

タイトルの隣に「劇中にて追善口上申し上げ候」と書いてありますが、白鸚さんは、昨年亡くなられた中村吉右衛門さんの実のお兄さんです。劇中で追善のごあいさつ「口上」をされます。劇中でこうした「口上」が挟まれるのは、襲名や追善などの特別な興行だけです。

そして二つ目は、『揚羽蝶繍姿(あげはちょうつづれのおもかげ)』
こちらは、今回の公演のために作られる演目です。二代目中村吉右衛門さんが得意としていた演目の登場人物たちが次々と出てくるという趣向のようで、追善ならではの演目!どんな作品になるのか楽しみです。吉右衛門さんの甥である松本幸四郎さん中心に、ゆかりの俳優たちが、ゆかりの演目の登場人物を演じるとのことで、今しか観られない貴重な作品になりそうです。
ちなみに、在りし日の吉右衛門さんのお姿を思い出して観ながら涙する歌舞伎ファンが近くにいるかもしれませんが、そのときはどうぞ見守っていてください。

《第三部の演目》『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』『藤戸』

まずは、『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場(かなでほんちゅうしんぐら ぎおんいちりきちゃやのば)』
第一部の『菅原伝授手習鑑』も「三大名作のひとつ」とご紹介しましたが、こちらの『仮名手本忠臣蔵』も三大名作のひとつです。そして、有名な「忠臣蔵」のお話です。第二部の『松浦の太鼓』も「忠臣蔵」にまつわるお話でしたが、そう、また「忠臣蔵」です。そのくらい歌舞伎界では頻出する人気の題材なんですが、人気に火をつけたキッカケ(大元)がまさにこの『仮名手本忠臣蔵』
今回上演するのは、「祇園一力茶屋の場」という一場面。主君の仇討ちを計画する赤穂浪士のリーダー・大星由良之助(史実では大石内蔵助)のところに、仇討ちの列に加わりたいと願う寺岡平右衛門という男が訪ねてくる場面です。

由良之助を演じるのは、片岡仁左衛門さん。この場面の由良之助は、歌舞伎演目の中でも屈指の「格好良い役」です。"にざ様"の愛称で多くのファンを魅了されている仁左衛門さんの由良之助は観逃がせません。さらに、寺岡平右衛門を演じるのは市川海老蔵さん。11月には團十郎の名前を襲名することが決まっていますので、海老蔵の名前では最後の歌舞伎座出演!という貴重な機会です。


ふたつめの演目は、『藤戸(ふじと)』
こちらは、お能の『藤戸』が元になった舞踊劇です。これも「松貫四 構成」とありますので、二代目吉右衛門丈が手掛けた作品のひとつです。
9月の演目の中では唯一の「舞踊劇」ですが、歌舞伎俳優の訓練された身体で表現される舞踊劇は、とても見ごたえがあります。今回主人公を演じるのは、尾上菊之助さん。菊之助さんといえば、舞踊の技術や表現力にもとても定評があります。内容は、戦で息子を失った母親の怨霊が出てくる、重い内容ですが、悲しみや怒りの感情表現を舞踊でどのように魅せていくのか、一見の価値ありだと思います。

 

・・・という感じで、9月は追善興行で若干、歌舞伎ツウ向けのラインアップかなという感じがしますが、出演者は豪華ですし、名優をたたえる追善興行という特別な公演をこの機会に体感してみるのはおススメです。

以上、9月演目のざっくり紹介でした。
皆様の「歌舞伎はじめ」に、少しでも参考になりますように!(編集A)


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