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【初心者さん向け!演目ざっくり紹介】12月歌舞伎座「十二月大歌舞伎」公演

皆様こんにちは。
皆さまの歌舞伎観劇の第一歩をサポートする「歌舞伎はじめてガイド」
歌舞伎を観てみたいけれど、どこから情報を得れば良いのかわからない・・・歌舞伎の演目名がずらっと並んでいても、どんな内容なのかがわからなくて困る!・・・そんな初心者さん向けの「演目ざっくり紹介」、こちらは2024年12月歌舞伎座編です。

12月歌舞伎座チラシ


 
12月は、3部制。1回の公演時間がいつもよりも少し短く、チケット代金も少しお安くなっています。「一度、歌舞伎座で歌舞伎を観てみようかな」という方にも、3部制の公演はおすすめです。

ではさっそく、上演演目を紹介していきたいと思います。


《第一部の演目》『あらしのよるに』

まずは、『あらしのよるに』。

ベストセラーとなった絵本が原作で、2015年にはじめて歌舞伎として上演された新作歌舞伎です。
『あらしのよるに』といえば、絵本のみならず2005年にはアニメ映画にもなって人気を博しましたが、そのアニメ映画でオオカミの「がぶ」の声を演じていたのが、歌舞伎俳優の中村獅童さんでした。それから10年後、獅童さんがそのまま「がぶ」役を演じて歌舞伎としての上演が実現。歌舞伎版『あらしのよるに』もその完成度の高さが大評判となって、何度も再演されていますが、がぶ役は獅童さんがずっと演じています。

この作品に出てくるのは、人間ではなく動物たち。主人公はオオカミのがぶと、ヤギのめいです。ふたりの友情などがあたたかく描かれます。歌舞伎にはもともと動物のキャラが出てくることも多いですが、ここまでキャラクターが全員動物というのは珍しいかも…!動物の絵本の世界を歌舞伎にするというのは最初は想像がつきませんでしたが、そこは歌舞伎の創造力と観客の想像力で乗り越えられるというのを証明してくれた、素晴らしい作品になっています。
絵本原作で、物語自体はとても親しみやすいストーリー。一方で、演出には、意外とふんだんに歌舞伎の手法が使われています。歌舞伎舞踊の要素もたっぷり。歌舞伎の面白さも感じられる作品となっています。だまされたと思って一度観てみてほしい!観たら良さがわかる!と強くおすすめしたくなる作品です。


《第二部の演目》『加賀鳶』『鷺娘』

最初の演目は、『加賀鳶』。

「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるくらい、江戸時代は火事も喧嘩もたくさんあったようです。そして、その中心にいたのが、このお芝居にも出てくる「鳶(とび)」の人たち。鳶のお仕事は、建設現場などで働くいわゆる大工仕事をする人たちのなかでも、高い場所での作業を任される職種の人たちです。高所での作業が得意ということで、火事が起こった際には、鳶たちが火消し役(いまの消防士)として駆り出されて大活躍していたようです。そんな姿が颯爽としていて格好良い!ということで、鳶の男衆は、あこがれの的、ヒーロー的存在でもあったようです。この芝居でも、ちょっと喧嘩っぱやく、でも粋で格好良い鳶たちが出てきます。
そして、この芝居の中でもう一人のメイン人物といえば、あんまの道玄。あんまは、いまでいうマッサージ師のようなものです。この道玄さんという人は、なかなかの悪党でふてぶてしいキャラクターです。悪党の道玄が闇の中で逃げ回るシーンがあるんですが、ここは歌舞伎初心者の方が観ても「おもしろ!」と思えるようなシーンになっていますので、お楽しみに。

☆歌舞伎好き社員・藤之森のトークでも、『加賀鳶』のお話しをしています。こちらもぜひチェックしてみてください。


そして、そのあと上演されるのが『鷺娘』。

こちらは、女方(おんながた)が踊る、美しい舞踊の演目です。
今回は、美しすぎるゆえに人外キャラがめちゃくちゃ似合ってしまう女方、中村七之助さんが鷺の精となって踊ります。雰囲気ぴったりすぎて楽しみです。
「娘」とあるように、踊りのテーマは娘の切ない恋心。パートごとに、衣裳もどんどん変わり、曲の雰囲気やテンポも変わるという曲を、女方ひとりで踊り切ります。
ラスト近くになると白い鷺の姿で舞う場面になりますが、このあたりは、バレエ「瀕死の白鳥」を思わせるところもあります。どちらも、美しい白い鳥が、儚く舞い踊る作品です。バレエや「踊り」に興味のある方も必見!


《第三部の演目》『舞鶴雪月花』』『天守物語』

まずは、『舞鶴雪月花』。

こちらは舞踊の演目です。
四季折々の風景を、パートごとに違った雰囲気で踊り繋ぐ、楽しい舞踊です。今回こちらを踊るのは、中村勘九郎さん。勘九郎さんは踊りの上手さもピカイチな俳優さんなので、たっぷり踊りを観られる機会をどうぞお見逃しなく!
春の「さくら」の場面は、桜の精として踊ります。女方、娘の姿での踊りです。
秋は、虫が踊るという珍しい「松虫」。この場面には、勘九郎さんの次男・中村長三郎さん(11歳)も一緒に出演します。かわいらしい松虫姿にご注目!
そして冬が「雪達磨」。チラシにもある、ひょうきんな見た目で登場します。見た目のインパクト大!ですが、決して「出オチ」にはなりません。雪だるまが愛おしくなるようなストーリーをしっかり踊りで堪能できます!

そして、最後が『天守物語』。

こちらは、歌舞伎の古典作品とはちょっと違った雰囲気の作品です。明治初期から昭和にかけて活躍した作家・泉鏡花が書いた戯曲で、和風異世界ファンタジー?というような独特な世界観が広がります。
女方のトップランナーとして長年舞台に立ち続けていらっしゃる坂東玉三郎さん(いまや人間国宝!)が、人間界ではない異界の姫の役を演じます。そして、その姫の恋のお相手となる人間の若者「姫川図書之助」を演じるのは、市川團子さん。現在20歳という若さで、玉三郎さんのお相手に大抜擢です。図書之助という役の純粋さと團子さんのフレッシュさがぴったりはまりそうな、とても楽しみな配役です。
泉鏡花の作品世界を表現するため、照明の明かりや、音響や、舞台装置や衣裳など全方向にこだわり、演出も上演されるたびにブラッシュアップされています。今回も玉三郎さんご本人が演出として名を連ねています。玉三郎さんの芸術的センスも存分に感じることができる一幕ですので、舞台芸術に興味がある方全般におすすめしたい作品です。
 
 
以上、12月歌舞伎座演目のざっくり紹介でした。
皆様の「歌舞伎はじめ」に、少しでも参考になりますように!(編集A)
 
 
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