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【初心者さん向け!演目ざっくり紹介】3月歌舞伎座「三月大歌舞伎」公演

皆様こんにちは。
皆さまの歌舞伎観劇の第一歩をサポートする「歌舞伎はじめてガイド」。
歌舞伎を観てみたいけれど、どこから情報を得れば良いのかわからない…歌舞伎の演目名がずらっと並んでいても、どんな内容なのかがわからなくて困る!・・・そんな初心者さん向けの「演目ざっくり紹介」、こちらは2025年3月歌舞伎座編です。

3月歌舞伎座チラシ

 
3月は『仮名手本忠臣蔵』の通し上演。昼の部では前半、夜の部では後半、という風に、1日かけて上演します。この「忠臣蔵」の芝居は、上演すると必ずお客さんが大入りになると言われるほどの人気作品です。
全部で十一段(連続ドラマのエピソード1~11まであるというイメージ。歌舞伎では、ストーリーの区切りを「段」と呼びます)からなる長いお芝居で、名場面もたくさんあります。今回のような「通し上演」の形ではなく、名場面だけ抜き出して上演されることもあります。それぞれの場面がどんな場面なのか少しだけご紹介していきます。
(今回、ほぼ全役がダブルキャストなのですが、それぞれの特徴をあげていると終わらなくなってしまうので・・・場面紹介にフォーカスをあてます)


《昼の部》『大序・三段目』『四段目』『道行旅路の花聟』

まずは「大序」。

物語のエピソード1です。まずは、登場人物紹介のような場面からはじまるんですが、はじまり方がこの作品ならではの独特な演出になっていて、登場人物ひとりひとりに、段々と魂が入って動き出していくという演出です。このはじまり方を見ただけでもう「仮名手本忠臣蔵がはじまった~」という気分になります。もともと人形浄瑠璃のために作られたものを歌舞伎として上演するようになったという経緯があるので、それを感じさせるような場面でもあります。唯一無二なので、一度は観ておいていただきたい。さすがにエピソード1だけを上演することはまずありませんので、この「大序」は通し上演のときにしか見られない場面です。


そして、「三段目」。

『仮名手本忠臣蔵』の物語は、江戸時代に実際に起きた「赤穂事件」がモデルになっています。赤穂の殿様・浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が吉良上野介(きらこうづけのすけ)に切りかかった刃傷事件のあと、浅野内匠頭だけに厳しい裁き(切腹の命令)がくだり、無念に思った浅野の家臣たちが殿の仇討をするべく吉良邸に討ち入ったという一連の事件です。『仮名手本忠臣蔵』は事件そのままのドキュメンタリーではなく、事件をモデルにしたフィクションで、登場人物の名前も史実とは違う名前になっています(この部分を説明すると長くなってしまうので割愛・・・)。というわけで、事件の発端は江戸城、松の廊下で起こった「刃傷事件」。三段目は、その「刃傷事件」の場面が出てきますので、発端となった「刃傷」の場面がどう描かれているのかが観られる場面です。


そして、「四段目」。

こちらは、事件のあとの場面。切腹を言い渡された浅野内匠頭(お芝居の中では塩冶判官(えんやはんがん)という名前になります)が、覚悟を決めて切腹をする場面です。切腹の儀式を舞台上で表現する場面で、客席も一緒に厳かな雰囲気でこの場の空気を作ります。そのため、途中入場や退場を許さない「通さん場」とも呼ばれる、特別な場面です。独特な空気感が漂います。


そのあとは、「道行旅路の花聟」。

この場の登場人物は、おかると勘平という若い男女のカップル。この芝居は、実際の事件をモデルにした「フィクション」ですので、実はこの「フィクション」部分が芝居のみどころでもあります。そこで重要人物となるのがこのカップルです。勘平は、切腹をした塩冶判官の家来ですが、殿が刃傷事件を起こしてしまったときに、その場に居合わせず、恋人のおかるちゃんとデートをしていました・・・。デートの際中に事件が起こってしまったため、騒ぎのなか屋敷にも戻れず、申し訳ないと失意の中にいますが、おかるが説得して、ひとまず恋人おかるの故郷に落ち延びていきます。美男美女が踊りで表現する逃避行の場面です。昼の部はここで終わって、物語は夜の部に続きます。途中までなんて中途半端・・・となるかもしれませんが、この一幕は舞踊として独立して楽しめますので、この場面だけ(たとえば一幕見などで)観るのも全然アリです。


《夜の部》「五・六段目」「七段目」「十一段目」

夜の部の最初は「五、六段目」から。

昼の部の最後の場面で逃避行をしていたカップル、おかると勘平のその後が描かれる場面です。
「忠臣蔵」の中で、特にこの五六段目と、この後の七段目が、その場面だけ抜き出して繰り返し上演されている人気場面です。(あと今回上演されない九段目も実はみどころ多い)
勘平は、猟師として生計をたてながら、塩冶判官の仇討ちの計画になんとか加わりたいという思いをあきらめていません。その勘平の思いと、おかるの家族の思い、いくつかの偶然が重なり合って、食い違い、悲劇に向かってしまう・・・というストーリーにぐっと引き込まれる場面。フィクションであるお芝居としての面白さがある場面です。


そのあとは、「七段目」。

赤穂事件の仇討ちのリーダーといえば、浅野内匠頭の家臣、大石内蔵助(おおいしくらのすけ)ですが、この芝居では大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)という役名になっています。
この七段目は、大星由良之助が活躍する場面。前の場面にも出てきた、勘平の恋人おかるも出てきます。廓を舞台にした華やかな舞台面で、とても有名な場面。例えば歌舞伎ファンがただ単に「七段目(しちだんめ)」と言ったら、忠臣蔵のこの場面のことです(ほかの演目にも七段目はもちろんあるけどそう呼ばない)。
四十七士をまとめるリーダー、由良之助役の格好よさが堪能できる人気場面です!


そしてラスト、十一段目。

いよいよ最後の場面。討ち入りの場面です。吉良邸に討ちいって仇の首をとる場面なので、戦闘シーン(立ち回り)もあります。ちなみに吉良上野介は、芝居のなかでは高師直(こうのもろのお)という役名です。
赤穂浪士のおなじみの揃いの衣裳で、派手な立ち回りもあり、格好良いです。最後は大団円となり、よい気分で劇場をあとにできる一幕です。


☆歌舞伎好き社員・藤之森のトークでも、3月の上演についてのお話をしています。こちらもぜひチェックしてみてください。

 
 
以上、3月歌舞伎座演目のざっくり紹介でした。
皆様の「歌舞伎はじめ」に、少しでも参考になりますように!(編集A)
 
 
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