【初心者さん向け!演目ざっくり紹介】1月歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」公演
皆様こんにちは。
皆さまの歌舞伎観劇の第一歩をサポートする「歌舞伎はじめてガイド」。
歌舞伎を観てみたいけれど、どこから情報を得れば良いのかわからない…歌舞伎の演目名がずらっと並んでいても、どんな内容なのかがわからなくて困る!・・・そんな初心者さん向けの「演目ざっくり紹介」、こちらは2023年1月歌舞伎座編です。
ではさっそく、1月の演目についてご紹介していきたいと思います。
※1月は、第一部(11:00~)/第二部(14:15~)/第三部(17:45~)の3部制です。
《第一部の演目》『卯春歌舞伎草紙』『弁天娘女男白浪』
新年の歌舞伎座、年始めの作品は、『卯春歌舞伎草紙(うどしのはるかぶきぞうし)』。チラシに「長唄囃子連中」とありますが、これは長唄という三味線音楽と、太鼓や小鼓などのお囃子が入った、舞踊の作品ですよ~ということを表しています。
「卯春(うどしのはる)」は、もちろん、うさぎ年の2023年春のことで、今回の上演のために作られる作品です。「草子」というのは、巻物や絵本のことで、今回の登場人物にも「出雲の阿国」が登場しますので、出雲の阿国のかぶきおどりからはじまった歌舞伎を「2023年もどうぞよろしくお願いします」という歌舞伎俳優たちからのご挨拶のような一幕です。お正月らしさ満載な舞台になると思います。
続いての演目は『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』。「しらなみ」というのは「盗賊」を表すことばで、主人公は、五人組の盗賊団!その五人組が勢ぞろいして名乗りを上げる「稲瀬川勢揃いの場」という場面は、さながら戦隊もののヒーローたちが一列になって、どーんと敵の前に揃う場面のよう!(・・・というか、戦隊ものの元になったのがこちらの歌舞伎演出だと思われます)
歌舞伎のほうでは、五人それぞれのキャラに合わせた音楽と鳴物で、ひとりずつ花道から登場してきます。私はこの登場の仕方がとても好きです。五人組のセンター的ポジションな弁天小僧、ちょっと武骨な南郷力丸、柔らかく中性的な雰囲気の赤星十三郎、きりっと男らしい印象の忠信利平、グループのドン日本駄右衛門・・・個性豊かなそれぞれの格好良さを堪能してください。5人の配役には、人気俳優たちが勢揃いしているのも楽しみです。
その勢揃いの場面の前に上演される「浜松屋」の場面には、「知らざぁいって聞かせやしょう」という歌舞伎屈指の有名なセリフが登場します。盗賊が浜松屋というお店にゆすりに入る場面ですが、歌舞伎初心者の方にもわかりやすく、楽しいのでおすすめです。
☆歌舞伎好き社員・藤之森のトークでも『弁天娘女男白浪』をご紹介しています。
《第二部の演目》『壽恵方曽我』『人間万事金世中』
第二部のはじめの演目は、『壽恵方曽我(ことぶきえほうそが)』。
歌舞伎の作品の中には、曽我十郎と五郎という兄弟が、父親の敵(かたき)を討つという有名な仇討ち物語をモチーフにした作品がいくつもありまして、「曽我もの」という一大ジャンルとなっています。とにかく江戸の人たちはこの「曽我もの」が大好きだったのか、お正月の上演には必ず「曽我もの」を上演するという習わしがありました。今でも、お正月のラインアップに「曽我もの」が入ってくることが多いです。「曽我もの」=お正月、おめでたいというようなイメージ。(もちろんお正月以外にも上演はされますが)
江戸時代の人たちもこういう芝居を観ながら新年を迎えたんだなぁと思いを馳せながらご覧ください。この一幕だけの上演だと話のストーリーはほとんどなくて、踊りを交えながら登場人物それぞれのキャラクターが語られていきます。豪華俳優たちの競演で、祝祭的な舞台をお楽しみいただけると思います。
そして二つ目は、『人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)』。すごいタイトルですが、リットンが書いた「The Money」という西洋の戯曲を、歌舞伎作者の河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)が翻案した作品で、明治時代になってからできた作品です。
サブタイトルもすごくて、「強欲勢左衛門始末」とあります。強欲な勢左衛門というおじさんが出てくるんですが、その役を、いま乗りに乗っている歌舞伎俳優・坂東彌十郎さんが演じます。彌十郎さんといえば、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の北条時政を、ときには歌舞伎俳優らしく重厚に、ときには愛嬌たっぷりに演じて話題になりました。我々歌舞伎ファンからすると、「とうとう彌十郎さんが世間に見つかった…!」という気持ちでした。彌十郎さんが強欲じいさんを演じて主演するこの芝居、おもしろくないわけがない!大注目の舞台です。
《第三部の演目》『十六夜清心』
第三部に上演されるのは『十六夜清心(いざよいせいしん)』。こちらも河竹黙阿弥作品です。1月は第一部~第三部まで黙阿弥が作った芝居ばかりですね。黙阿弥まつり。
歌舞伎は、長いお芝居のうちの人気のある場面だけを上演するということも多く、そういう場合、前後のストーリーと繋がりが初めての方にはわからなくてそれが「難しい」という印象を与えてしまうことがあります。
そういう意味でいうと、第三部の『十六夜清心』は、はじめから最後まで通しで上演する「通し狂言」スタイルでの上演になりますので、はじめての方にも親切な上演形態になっています。
ただ、最初の幕は舞踊スタイルで進んでいくので、歌舞伎に馴染みがないとそこで挫折してしまう可能性は否定できません・・・でも、歌舞伎の美しさを堪能できる場面なので、ぜひイヤホンガイドを借りて観ていただきたい・・・(イヤホンガイド借りれば大丈夫と保証します!)
十六夜という遊女と、清心という修行僧、美しいふたりのカップルの行く末を描いた物語ですが、後半、ふたりがガラッと雰囲気の変わったキャラクターになるのが面白い芝居です。松本幸四郎さんと中村七之助さんという美しい人気俳優ふたりの「十六夜&清心」・・・こちらも見逃せない上演です。
歌舞伎の芝居の面白さ、演出の妙を堪能したい方はぜひこちらをどうぞ。
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以上、1月演目のざっくり紹介でした。
皆様の「歌舞伎はじめ」に、少しでも参考になりますように!
歌舞伎座も今の歌舞伎座に建て替わってから早いもので10年が経ちました。2023年は、「歌舞伎座新開場十周年」として魅力的なラインアップが続きそうです。十周年を迎えた歌舞伎座にぜひお越しください。(編集A)
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