忘れられない観劇体験!~音楽の都での歌舞伎観劇・前編~
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忘れられない観劇体験!~音楽の都での歌舞伎観劇・前編~

解説者が想い出の舞台について語る「忘れられないあの舞台!」シリーズ…と見せかけて、今回はそれとはほんの少しだけ趣向を変えた「忘れられない観劇体験!」を前編と後編に分けてお送りします。

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文:市井佳代子

皆様こんにちは。市井佳代子です。今回は、歌舞伎の海外公演を観に行った時のことをお話ししようと思います。1989年10月に行われたウィーン公演に行ったのですが、これは私にとって忘れられない観劇体験となりました。


まずは宿探しから

ウィーン公演は、10月20日から24日の5日間です。私が現地入りしたのは10月19日でした。着くとまず、宿探しです。

初めての一人旅。外国では女性の一人歩きは危ないので避けたかったのですが、開演時間は7時でした。演目は『棒しばり』『鷺娘』『熊谷陣屋』でしたので、終演は11時頃でしょう。そうなると、なるべく夜道を歩く時間を短くする為に、劇場の近くに泊まりたかったのです。
5日間の公演中3回は観たかったので、24日まで6泊の予定です。懐具合を考えると、1泊5千円程度のペンション(民宿)が理想です。そして劇場から徒歩7・8分以内、という条件で探し始めました。

実はこの旅行は、全行程2週間の旅でした。ウィーン入りする前は、西ドイツの街々を列車で巡り観光していました。まだドイツが東ドイツと西ドイツに分かれていた時代です。西ドイツでも、しゃれたペンションを探して泊まり歩いていたので宿探しは苦ではありませんが、大都市の中心地にある劇場の近くという条件つきですと、これがなかなか難しいものでした。
何軒かこれは、と思う所がありましたが「街燈が少ないので夜の帰り道がこわそー」とか、シングルの部屋が空いてなかったりとか、どうも決め手に欠けました。

そこで計画変更!観劇する予定の最後の3日間は、少し贅沢して普通のホテルに泊まることにしました。すると選択肢がぐっと広がります。地図を見ると劇場の斜め前にホテルがあったので、電話してみると、ちょうどシングルが空いているとのこと。これでひと安心です。

宿探しは一見無駄なようですが、繁華街とは違う裏道の風情を楽しめるので、これもまた私にとっては一つの観光なのです。

市井さんA

裏通りにも情緒がある


さて、観劇日の宿が確保できたので、今日泊まる所を決めなくてはなりません。シュテファン寺院の裏手のプチホテルに泊まることにしました。ペンションではないけれど、料金が安く、家族経営で、なんとなく雰囲気が良かったのです。

チェックインすると、ポーターの人が荷物を持って部屋へ案内してくれるのですが、このポーターさん、結構なお年のおじいさんでした。重い荷物を持たせるのはなんだか気の毒…。『沼津』の平作を見ているような気持ちになり、思わず「自分で持ちます」と言いかけ、はっとしました。
この人の仕事を奪ってしまうことになるのです。海外では「労働」に関する考え方がシビアだと聞きます。高齢でもちゃんと働いている所を見せないとクビになってしまうかもしれないと思い、そのまま持ってもらうことにしました。

部屋はバス・トイレ付き!ペンションではどちらも共同だったので、部屋の中にあるだけで有り難い。これで観劇日まで快適に過ごせそうです。


歌劇場の専用窓口はどこに?

さて、次は観劇において一番重要なこと。チケット取りです。
欧米では、初日の翌日新聞に載る劇評が良いと、すぐに完売してしまうといいます。そこで、劇評が出る前にチケットを買おうと、初日前に現地入りしたのでした。せっかく世界有数の伝統と格式あるウィーン国立歌劇場に来たのだから、その窓口でチケットを買いたかったのです。

しかし行ってみると、劇場にそれらしき窓口がありません。

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