
バーチャル芝居ゆかりの地めぐり① ~『研辰の討たれ』をたずねる~(後編)
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イヤホンガイド解説者は、解説を担当する演目について様々なアプローチで取材をしています。ときには、その芝居ゆかりの土地を実際に訪ねることも。そんな芝居にまつわる旅のことをお話する「バーチャル芝居ゆかりの地めぐり」。
今回は『研辰の討たれ』ゆかりの地をたずねる市井佳代子さんの旅、後編です。さあどんな出会いが待っているのでしょうか。
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文:市井佳代子
皆様こんにちは。市井佳代子です。
前回に引き続き『研辰の討たれ』ゆかりの地を訪れた時のことをお話しいたします。
前回のおさらい
この芝居は、敵を討たれる側が主人公という異色の仇討ち物で、主人公の名は、お芝居では辰次ですが、実際は辰蔵です。辰蔵は、香川県綾川町の羽床で、敵(かたき)として討ちとられました。近江の国(滋賀県)で殺人を犯したあと諸国を逃げ回っていた辰蔵は、羽床の実家に戻り、また研ぎ師として暮らしていたところ、殺された武士の弟たち(お芝居では息子達)に見つかったのです。
↓ 前回の記事はこちらから
浄覚寺
敵討ちが行われた場所の近くに、辰蔵の弔いを行ったという浄覚寺があるので、行ってみました。
↑ 浄覚寺(香川県綾歌郡綾川町)
浄覚寺は本堂が閉まっていて、全く中が見えませんでした。せっかく来たのにな、と周りをうろうろしていると、住職の奥様に会うことができました。ご住職が亡くなられたばかりで、寺を閉めていたとのこと。
私が訪れた訳を話すと、本堂を開けて中へ入れてくださいました。その上お茶まで出してくださったので、世間話やら研辰の話やらをしていますと、ふいに奥へ行かれた奥様が「ちょっと手伝ってー」とお呼びになります。奥へ行くと、棚から大きな箱を出しているところでした。
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