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歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #10

解説者たちが歌舞伎の沼にハマった経緯と歌舞伎愛を語るシリーズ「歌舞伎の沼からこんにちは。」

幼い頃は日本舞踊を習っていたという阿部さとみさん。
しかし歌舞伎沼への入り口は全く別のところからだったようで…?
どうぞお楽しみください。

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文:阿部さとみ

歌舞伎沼近くに生まれ育ったが…。

母が日本舞踊を教えていることから、幼い頃は日本舞踊を習っていた。歌舞伎も母に連れられてしばしば行き、嫌いではなかったけれど、ことさら興味を抱かず、思春期を迎える頃には日本舞踊のお稽古からも歌舞伎観劇からも遠ざかってしまっていた。

母は二代目松緑さんが大好きで、松緑さんが家元だった藤間流(勘右衛門派)に入門し、舞踊師匠となった。いわば歌舞伎沼の住人である。そんな母の沼の中に生まれ育ったというのに、中学高校時代はテニス部のかたわら『宇宙戦艦ヤマト』や『キャプテン・ハーロック』といったアニメや漫画に夢中になり、続いて『野球狂の詩』に導かれてプロ野球に熱中。やがて外資系IT企業のOLとなってからは、仕事人間に。時はバブル全盛期、アッシー君もメッシー君もミツグ君もいなかったけれど、スキーやらテニスやらダイビングやら…と、それなりに楽しんだ。聴く音楽といえば、マドンナとかデュラン・デュラン。歌舞伎とは全く接点のない日々を送っていた。


恋は突然に―「鷺娘」降臨―

そのOL時代のこと。ふと歌舞伎観劇に赴いた。同僚に誘われ、観てみようかなといった軽い気持ちからだ。これが後の人生を大きく変えることも知らずに…。歌舞伎熱は恋に似ている。そう恋は突然にやってきたのだ。

仕事人間だった私の心を奪ったのが『鷺娘』。玉三郎さんの美しさ、姿かたちにうっとりとした。なんと美しいものがこの世にあるのだ。いやこの世ではないのかも。この世のものとは思えない、そんな表現がぴったりの世界だった。昔、日本舞踊をやっていたというのに、全然内容も知らなかったけれど、すごいものはまっすぐに心に訴えかけてくる。「わからないけどすごい」、そうした存在がそこにあった。『鷺娘』の湖畔に沼の扉があり、そこにまたたく間に吸い込まれたのであった。

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もしかして歌舞伎って面白い?

興奮はしばらく覚めやらず、歌舞伎ってもしかして面白いのかも…と、時折、歌舞伎座に足を運ぶようになる。本来音のない降雪に音をつける感性、一瞬にして衣裳を変える引抜きの手法、スペクタクルな大道具の転換などなど日本人の知恵とはなんと優れたものなのだろうと、歌舞伎を通じて自国の文化の妙味を少しずつ少しずつ知る。加えて、現在に生きる私たちとも共通する恋だの愛だの出世欲だのと、ファッションは変わっても人の心は変わらないことにも大いに感興をそそられたのであった。

さらにセリフを覚えたいという気持ちもわいた。たとえば『勧進帳』では勧進帳の読み上げや問答を覚えたい!とCDを購入。通勤時にウォークマン!で聴き込んだりもした。

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弁慶勧進帳読み上げの図
作:歌川芳鶴

そんな頃に出逢ったのが『ぴあ歌舞伎ワンダーランド』。内容に関しては、おすすめの「この一冊」として先頃発売の『演劇界』2021年3月号に記したので、ここでは詳しくは語らないが、歌舞伎沼をそっと覗いていた私の背中を押してくれた一冊である。この本を通して、あれもみたい、これもみたいという観劇欲を刺激されたのだった。

↑阿部さとみさんおすすめの一冊が気になる方は『演劇界』2021年3月号を
要チェック!バックナンバーの注文もできます。

それにもう一つ恋をしたことも大きい。菊五郎さんにときめいたのだ。
好きな俳優さんの存在。これこそが芸能を知る原動力となる。

コスプレの日々

観る物聴くこと全てが楽しく、ワクワクが止まらない日々。歌舞伎舞踊を自分が踊ることができる日本舞踊にも目が向いた。

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