解説者の本棚から ~読書の秋!食欲の秋!~
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解説者の本棚から ~読書の秋!食欲の秋!~

季節の変わり目、台風などもあり気候の安定しない時期ですが読者の皆様は元気にお過ごしでしょうか。体調に気を付けつつ、紅葉や栗・さつまいもなどの秋らしさを楽しみたいものです。

そんな訳で今回は、読書の秋・食欲の秋に相応しい「解説者の本棚から」シリーズ第3回をお送りします。どうぞお楽しみください。

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文:白鳥真有子

秋といえば…

今しがた山形の友人が送ってくれた梨が届きました。
「豊水」……うーんやっぱりいい名前ですね。箱の中に入っていた産地のカードをみると、豊水、幸水、南水と「水」がつく名前がたくさんあります。みずみずしい梨にピッタリの名前です。果物を水菓子というと知ったとき、そう名付けた感性に感動しましたが、果物の名前には言い得て妙だという名前が多いような気がします。
梨は古くから日本に自生した果物のひとつだそうで、江戸時代後期にはなんと150以上もの品種が栽培されていたそうです。また「なし(梨)」は「無し」に通じるので「ありのみ(有りの実)」とも呼ばれます。お芝居では「ありのみ」は聞いた覚えがちょっとないのですが、「すり鉢」を「あたり鉢」と呼んで、買った初鰹を入れる場面が『髪結新三かみゆいしんざ』で見られます。
……なにやらお腹がすいてきましたが、まずは食に関する本をいくつかご紹介します。


江戸時代のお酒、肴の楽しみ方

『居酒屋の誕生 江戸の呑みだおれ文化』
飯野亮一著、筑摩書房、2014(ちくま学芸文庫)

お芝居にはよくお酒が登場します。九月の歌舞伎座で上演された『お江戸みやげ』では、お酒をきっかけに出会いが生まれ、主人公は生涯忘れられない思い出を作りました。この主人公が飲んだお酒は上方(関西)からの下り酒
江戸時代、うまい酒といえば関西地方のお酒でした。江戸でも美味しいお酒は造られていたそうですが、下り酒には勝てなかったようです。

著者の飯野亮一さんは食文化史研究家で、江戸時代のお酒の話を中心に、酒の肴になった食べ物や店の様子、お酒を楽しんだ当時の人々の様子を絵や川柳などを交えて、丁寧に読みやすく書いています。読み終わると、熱燗が恋しくなる一冊です。肴はなにがいいですか?私は芋の煮っころがしの気分です。詳しくはぜひこちらの本で。


江戸料理のマニアックな事典!?

さて、次は事典を読んでみるというのはどうでしょう。むかし入院中に広辞苑をずっと読んでいたという人の話を聞いたことがありますが、辞書や事典も読み物として面白いものが山ほどあります。

『図説江戸時代食生活事典』
日本風俗史学会編、雄山閣、1978

江戸時代の食べ物、料理、道具など、食生活に関わる物事を広く解説した事典です。
その物の伝来や歴史、生活の中でどう使われていたかなど、文献や絵を挙げながら詳しく書かれています。例えば「蕎麦」と引くと、まず植物の蕎麦について。次に食品の蕎麦。それから蕎麦粉、最後に江戸の蕎麦屋、上方の蕎麦屋と細かく分けられています。蕎麦はこの事典の中でも熱く書かれている例になりますが、全体を通してマニアックな熱量をじわじわ感じる事典です。


たべものの由来や歴史…エッセイたっぷり

『愛蔵保存版 たべもの日本史総覧』
西山松之助ほか著、新人物往来社、1994

こちらは読み物がとても豊富な事典です。
古代や江戸など時代をテーマにしたものから、特定の場所や人物、有名な文献をテーマにしたものなど、その道の研究者が書いたエッセイを数多く読むことができます。

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