
《歌舞伎×○○》ようこそ!歌舞伎を魅せる宝塚の世界へ
芝居好きの解説者たちに、様々なジャンルについて歌舞伎好きの視点から語ってもらおうという《歌舞伎×○○》。今回のテーマは、どちらも虜になったら抜け出せない《歌舞伎×宝塚》です。
両方の魅力を知る阿部さとみさんが、宝塚の舞台に垣間見える歌舞伎との関わりをご案内します。歌舞伎ファンだからこそ楽しいポイントとは?
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文:阿部さとみ
「♪ 恋よ恋、われ中空になすな恋~」
ご存知、清元『保名』の一節である。
一昨年(2018年)、宝塚歌劇団にて行なわれた日本物レビュー『白鷺の城』は安倍泰成と妖狐・玉藻の前が転生を繰り返して対決するうちに、惹かれあうというロマンスを帯びた内容。中に安倍保名と葛の葉の別れのシーンがあり、そこで歌われた楽曲に先の一節があった。歌舞伎好きとしては、宝塚の中の歌舞伎の要素に心くすぐられる瞬間である。
宝塚歌劇団といえば、キラキラの世界。格好いい男役と愛らしい娘役が繰りひろげるロマンチックなお芝居やきらびやかなショー。あるいは『エリザベート』や『ロミオとジュリエット』といった大作ミュージカル、漫画に材を得た『ベルサイユのばら』『ポーの一族』などなど、スタイリッシュな洋物のイメージが強い。しかし、先のごとき日本物レビューや歌舞伎由来の芝居も時折上演され、意外や意外、歌舞伎との関連性が垣間見られるのである。
宝塚に取り入れられた歌舞伎演目
宝塚歌劇団の創設者 小林一三は、「国民劇としての日本的歌劇の創造」を目指し、宝塚歌劇をその第一歩として位置づけていた。当時の青年子女が西洋的な唱歌教育を受けていることを背景に、歌舞伎から三味線音楽を排し、西洋音楽を取り入れて調和させたものこそが国民劇だと考えたのである。当時盛んに行なわれたオペラのように、西洋のものをそのまま真似て見せるのではなく、あくまでも日本風にアレンジすることが大事であった。
歌舞伎の摂取はとりわけ舞踊作品に多く、『鏡獅子』『五人道成寺』『宝三番叟』などなど詞章をほぼそのままに洋楽で踊るという手法がとられている。
中でも『鏡獅子』は、六代目菊五郎に私淑し「女六代目」との異名をとった天津乙女(あまつおとめ)が得意とし、二十回近く再演を重ねられた。特徴的なのは大勢の腰元や大勢の胡蝶が出ること、後半が清涼山の場になることである。
宝塚の初期には、歌舞伎由来の演目は単独の演目としての上演が多かったが、次第に日本物レビューの中にパッチワーク式に取り込まれる形式も生まれ、時代と共に後者が主流となり今日に至っている。
日本物レビューに生まれ変わった「三番叟」「獅子物」
2014年に創立百周年を迎えた宝塚。その記念演目で日本物レビューの『宝塚をどり』(月組公演)には、「三番叟」と「獅子物」が組み込まれていた。