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《歌舞伎の中の〇〇探し》歌舞伎と江戸と縁起物

2021年が始まって、2週間ちょっと。寒いし、お正月を外で楽しむというのがなかなかしづらい時勢となりましたが、いかがお過ごしですか?

今回は五十嵐大祐さんによる、歌舞伎の中の〈縁起物〉探し。おめでたい雰囲気を感じてください。江戸の街に住む、お芝居の中の登場人物たちの考え方はわたしたちにも受け継がれているようです!

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文:五十嵐大祐

2021年の幕開きですね。初春。迎春!新年には「あけましておめでとうございます」という名台詞?がありますが、昔から新しい年を迎える事は、大変におめでたく、新年は縁起が良いとされてきました。

正月のおめでたい風景

お芝居の世界でもお正月は特別です。今年2021年1月の歌舞伎座をみても、賑々しく「壽初春大歌舞伎」と銘打たれ、門松や紅白の玉飾り、大きなエビの鏡餅も飾られて、とても華やかです。お正月らしい縁起物に溢れ、連日、ご見物の目を楽しませています。

2021年1月歌舞伎座公演についてはこちら↑
劇場のお正月飾りは松の内である15日まで見られます。


狂言も、日本人の縁起物のシンボル 松竹梅 を連想させる、「松」王丸・「梅」王丸が登場する『菅原伝授手習鑑』の「車引」や、江戸の昔から正月の歌舞伎には欠かせない「曽我物」を浅草歌舞伎の花形役者たちが演じる『壽浅草柱建(ことほぎて はながたつどう はしらだて)』など、出し物も、新春らしいハッピーな演目を並べるのが、正月歌舞伎のおなじみの風景です。

思えば、2019年 新春浅草歌舞伎の切(きり、その日の最後の演目)は江戸の庶民の姿を 七福神 に見立てた常磐津舞踊『乗合船恵方萬歳(のりあいぶね えほうまんざい)』でした。クライマックスの宝船に乗った七福神と、おめでたい雪化粧の富士山の絵を観ていると、すでに初詣が済んだような気分になり、ダメ押しで浅草寺をお参りしたあとは「今年一年の幸運は間違いないな…」と仲見世を歩きながらひとり確信したものです。

2019年浅草歌舞伎の公演についてはコチラへ↑


ちょっと話が逸れますが、お正月といえば、定番のおせち料理には、ひとつひとつのお料理に、縁起担ぎや幸福、健康への祈りが込められていますよね。おせちには本来、所狭しとひしめくようにぎゅうぎゅうにお重に盛り込むことを吉例とし、これはお重を開けた瞬間の「わぁ~!」という 「眼福」と、いただく人の一年の 無病息災 を祈る、料理人の願いでもあるそうです。


「縁起が良い」のルーツ

さて、そんな風に正月はとりわけ縁起が良い、おめでたいコトやモノに溢れる時期ですが、考えてみると正月に限らず、今も昔も日本人は一年中、縁起担ぎに走り回っているような気がします。

しかし、そもそも縁起が良いとはどういうことなのでしょうか?何となく宗教から来る言葉であろうことは察しがつきますが、調べてみるとやはり、縁起には日本人と仏教のつながりが深く関係していました。

もともと縁起というのは「仏様との縁の起こり」、つまり「仏様とのコネ」であり、縁起が良いというのは「私は仏さまとつながってます(だからラッキー!)」ということです。

歌舞伎の名作『勧進帳』で、弁慶が声高らかに読み上げる勧進帳も、単なるお寺への寄付を募る巻物ではなく、東大寺のご本尊である毘盧遮那仏(大仏様)とのご縁が書き記された 縁起物なのです。

そもそも仏教には、「物事が起きるのは因果によるもの」だという〈因縁生起(いんねんしょうき)〉という教えがあります。人との出会いや、身の回りのあらゆる出来事は、偶然のように見えて実は必然で、そこには必ずその人にとって何かしらの意味があるという考え方です。この仏教の教えは古来より日本人に深く信奉され、やがて神仏習合で神と仏の教えとして受け入れられました。

現代の、信仰心がないといわれる日本人でも、神社やお寺でおみくじを引き、また占いや運勢・巡り合わせなどを信じて行動することはごく当たり前のことで、縁起担ぎは日ごろの心を整えるルーティーンとしても、生活の一部になっていると言えるでしょう。

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季節を大切にする日本人

また、四季という日本特有の風土が日本人の気質を育んできました。日本人は神や仏の教えという〈器〉の中で、春夏秋冬を〈和える〉ことで、独自の価値観を作り出してきたのでしょう。

歌舞伎でも江戸の昔から、こういった仏教や神道を信じる日本人の考え方・感じ方をその時代に合わせて実に巧みに作品に取り込んできました。

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