歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #16
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歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #16

イヤホンガイド解説者たちが、歌舞伎や文楽の魅力にハマった経緯や芝居への愛を語るシリーズ「歌舞伎の沼からこんにちは」。実は”別の沼”の住人だったという髙橋ひさしさん。歌舞伎沼への道のりはどんな風景だったのでしょうか??

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文:髙橋 ひさし

私は『義経千本桜』二段目・大物浦や『絵本太功記』十段目の舞台、そして近松門左衛門ゆかりの地でもある兵庫県は尼崎の出身。それなのに歌舞伎に触れたのは大学を卒業してからなのです。あれは2004年7月大阪松竹座での十一代目市川海老蔵襲名披露公演でした。
まずは私が「歌舞伎を見たい!」と思うようになったキッカケからお話しします。

映画解説者からの沼への導き

もともと映画沼の住人の私は、大学に入ってもろくに勉強もせず、映画館のアルバイトに明け暮れていました。雑誌『Kansai Walker』を買っては仲間同士で映画館のタイムスケジュールとにらめっこをして、「これを見終わって5分で走ったらこっちに間に合うで」などと、どうしたら一日で一本でも多く映画のハシゴができるか、そんなことばかり考えていました。

ちょうどその頃、映画評論家・淀川長治さんの追悼として発売された『淀川長治の遺言』を読み、あの独特で軽妙な語り口のままの筆致で歌舞伎や文楽の魅力を紹介されている特集ページに目を奪われました。映画の世界から古典芸能の世界へ何の抵抗もなくスッと入れたのです。さらに六世 中村歌右衛門丈や初代 吉田玉男師との対談で語られる古典芸能の奥深さは、映画馬鹿に「これは一度生で見てみたい」と思わせるのに十分なものでした。

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伝統芸能の世界に誘ってくれた
『淀川長治の遺言』

沼の入口 大阪松竹座

時期をほぼ同じくして発表されたのが冒頭の市川海老蔵襲名披露公演。大学は卒業できたものの、しばらくふらふらした生活を送っていたので時間はたっぷりある。よし、それなら歌舞伎とやらを見てみようと友人を誘い、松竹座に足を踏み入れました。それが沼の入口とは知らずに……。

三階席から見た夜の部の『勧進帳』。海老蔵丈の弁慶が幕切れに見せる飛び六方の迫力に友人と興奮して拍手をしたことを覚えています。歌舞伎のイメージ=飛び六方、それぐらいほぼ知識ゼロで見ましたが(その時はイヤホンガイドがあることに気づいていなかった……)、音楽や美術、劇場の雰囲気にも魅了され、後日、昼の部を見ることにしました。そこで、さらにガツーンと衝撃を受けるのです。まさに沼にズブっとはまる瞬間でした。

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2004年7月大阪松竹座 
十一代目市川海老蔵襲名披露公演
チラシと番付


引き込まれた仁左衛門丈の『俊寛』

それは片岡仁左衛門丈が演じられた『俊寛』でした。その幕切れ、都からの迎えの船に仲間と海女の千鳥を乗せ、ひとり鬼界ヶ島に流人として残る覚悟を決めた俊寛。

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