歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #22
見出し画像

歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #22

イヤホンガイド【観劇に+αの楽しみを!】

イヤホンガイド解説者たちが、どうやって歌舞伎を好きになり、どこに魅力を感じているのかを語る「歌舞伎の沼からこんにちは。」シリーズ、今回は、英語解説者のフェイス・バッハさんが登場。

イヤホンガイド解説者のほかにも、俳優、ナレーター、ラジオ英会話出演、大学講師…など色々なところで活躍してきたバッハさんは、歌舞伎のどこに惹きつけられたのか・・・どうぞお楽しみください。

***
文:フェイス バッハ Faith Bach

初めて観た歌舞伎の「光」

私が初めて歌舞伎を観たのは1973年でした。上智大学の1年間の「交換留学」プログラムで東京に着いたばかりで、日本語は話せませんでした。ただ、私は子供時代から演劇に関わっていたので、日本で最初にお金を払ったもののひとつが「歌舞伎座(昔の美しい歌舞伎座)の三階席」だったのです。

The first time I saw kabuki was in 1973. I had just arrived in Tokyo on a college “Year Abroad” program at Sophia University and I spoke no Japanese. But I had been a theatre person since my childhood, so one of my first purchases was a third floor seat at the beautiful old Kabuki-za.


私は少し遅れて行って(遅れるのが今風だと聞いていたので…)、階段を昇り、客席の中央扉を開けました。両側に高く椅子が連なった通路があって、長くて暗く、小さな灯りがカーペットの床沿いに点いているだけでした。その神秘的なトンネルを抜けると何があるのかしらと思いながら、音楽の聞こえる方に向かって歩いたことを今でも覚えています。

I arrived late, since I had been told that arriving late was fashionable, climbed upstairs and opened the centre door to the hall.
The high banks of seats on either side created a long, dark passageway, with only tiny lights along the carpet. I still remember walking through that mysterious tunnel toward the music, wondering what I would find at the end of it.


すると突然、目がくらむような光に輝いた桜でいっぱいになった歌舞伎の舞台が、視界の下の方に広がったのです。天井から釣られた釣枝の桜、大道具の大木に咲く桜、背景に描かれた桜、…舞台一面、桜で埋め尽くされていました。この、明るいピンク色の強い光が、私が初めて見た歌舞伎でした。私は自分の席を探そうとはせず、終演して客席が明るくなるまで通路の突き当たりに立っていました。その日観たのが、何というお芝居で、誰が演じていたのかも分かりませんが、私はその「美の空間」に、歌舞伎座の三階から、天上の神のような気分で参加したのを覚えています。

Then suddenly I emerged into a vast blinding light, with the whole of the kabuki stage spread out far below me, ablaze in sakura. Sakura hanging in thick ropes from the flies, sakura bursting from great trees on the stage, sakura painted on the backdrop, sakura everywhere. This bright pink flash of light was my first sight of kabuki. I did not try to find my seat. I stood there at the end of the passageway until the show was over and the house lights came on. I have no idea what plays or actors I saw that day, but I remember participating in that beauty, from the third floor of the Kabuki-za, like some god in the clouds.

[足立区立郷土博物館蔵]四代目市川小団次の清水清玄、二代目市川米十郎の奴淀平、初代河原崎権十郎の直宿之助、四代目尾上菊五郎の桜ひめ


女方は男性か、女性か

歌舞伎について、次にはっきりと記憶に残っていることといえば、その同じ年の七代目菊五郎の襲名披露公演です。留学仲間のアメリカ人男性にデートに誘われたので、私は彼に歌舞伎座の一階席を買おうと提案しました。私たちは花道揚幕のそばに座り、この時の演目も覚えていませんが、初めて見た菊五郎の美しさは覚えています。

My next clear memory of kabuki is of the shūmei performance of Kikugorō VII, later that year. An American man in my program asked me for a date and I told him to buy first floor seats at the Kabuki-za. We sat near the agemaku, and again I do not remember the play but I remember my first sight of Kikugorō’s beauty.

この続きをみるには

この続き: 4,833文字 / 画像2枚
この記事が含まれているマガジンを購読する
解説者のコンテンツはその他に… 歌舞伎座「見どころポイント」WEB講座を配信中! https://earphoneguide.eg-gm.jp/m/m547424bc0b3f イヤホンガイド解説者が各部の見どころをじっくりレクチャーします。

歌舞伎・文楽のイヤホンガイド解説者が、古典芸能が好きな皆さんと共有したいことや芝居への愛を語ります。複数名の解説者が執筆を担当するので、色…

スキ、ありがたき幸せ。
イヤホンガイド【観劇に+αの楽しみを!】
おもに歌舞伎や文楽など、伝統芸能をわかりやすく解説する劇場サービス「同時解説イヤホンガイド」を運営している会社です。イヤホンガイド解説者の記事やトークを配信中!https://earphoneguide.eg-gm.jp/m/m2752100a0106