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《第三回》「勝手に深掘り!歌舞伎・文楽」~『時今也桔梗旗揚』と『絵本太功記』歴史上あり得ない?悲劇の英雄・光秀

「イヤホンガイド解説者のひろば」今回は鈴木多美さんがご担当。
これまでの解説経験で「何故?」と思った疑問を、多美さん目線で深掘りする不定期連載企画「勝手に深掘り!歌舞伎・文楽」の第三回をお届けします。
さて、今回はNHK大河ドラマでも話題の明智光秀が登場する『絵本太功記』について掘り下げていきましょう!

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文:鈴木多美

『麒麟が来る』いよいよ大詰

NHKで放映中の大河ドラマ『麒麟がくる』は、本能寺の変で織田信長を暗殺した明智光秀が主人公です。コロナ禍騒動で放映が延びましたが、いよいよ大詰を迎えます。

明智光秀の謀反の原因は未だに解明されていません。「信長が徳川家康の饗応役の光秀を突然解任したから」「朝廷・足利義昭・イエズス会黒幕説」…。果ては「怒った信長が光秀を扇で頭を叩いたら、光秀の付け髪が取れて信長は嘲笑ったから」まであります。

この付け髪説は信ぴょう性が低いのですが、光秀と髪のエピソードは寛政9年(1797)初編刊行の読み物『絵本太閤記』にも、光秀がまだ若い頃貧乏で客人に酒肴を出すため光秀の妻が髪を売って銭を拵えた話で登場します。これは後に4代目鶴屋南北作の歌舞伎『時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)』の馬盥の場で、小田春永(※)が武智光秀に昔光秀の妻が貧苦のため売った切り髪を見せて、満座の中で光秀を辱める場面となります。

(※)芝居では実名が禁止なので明智光秀は武智光秀、織田信長は小田春長(尾田春永とも)、羽柴(豊臣)秀吉は真柴久吉と表記します。
令和3年3月に国立劇場にて『時今也桔梗旗揚』が上演予定です。
気になる方は上記リンクからチェック!


歌舞伎「桔梗旗揚」と文楽「太功記」、光秀の髪型が違う?

では、明智光秀の髪型はどうなのか?気になって調べました。

読み物「絵本太閤記」は大ヒットして、これにあやかろうと寛政11年(1799)人形浄瑠璃(文楽)の『絵本太功記』が初演します。「太閤記」ではなく「太功記」と表記します。作者は近松やなぎ他。1日を1段にして全13段です。

十段目「尼ヶ崎の段」は正しくは「十日の段」と言います。ここが最大の見どころで初演番付の口絵にも「尼ヶ崎の段」が描かれました。叢の中で槍を持つ光秀の頭は月代(さかやき)を剃って元結が取れた「大わらわ」…ザンバラ髪です。

初演時の絵は八木書店『義太夫年表』第4巻にあります。


現在上演する文楽「太功記」の光秀は、六段目「妙心寺」の段も十段目「尼ヶ崎」の段も「菱皮(ひしかわ)」の髪型です。

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