歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #15
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歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #15

イヤホンガイド解説者たちが、歌舞伎や文楽の魅力にハマった経緯や芝居への愛を語るシリーズ「歌舞伎の沼からこんにちは」。

今回は英語解説者のポール・グリフィスさんが初登場。ポールさんの浮世絵コレクションとともにお楽しみください。

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文:ポール・グリフィス

生きた日本文化に触れた幼少期

私の経験上、歌舞伎を初めて観るのに最適なタイミングは、“若いうち”です。できるだけ若い時……幼少期ならなお良いと思います。子供の頃なら、大人たちが抱くような先入観なしに観ることが出来るからです。日本にいた頃、「歌舞伎は言葉が古いし、舞台の約束事も独特で、難しくてわからない」というネガティブな意見を何度も聞きました。でもこれは子供たちにとってはあまり問題にならないことだと思います。歌舞伎は、興奮や驚きをよどみなく提供して、想像力を刺激し広げるパワーを持っています。

In my experience, the best time to introduce people to Kabuki is when they are very young. The younger the better. This is because at that age they can watch without the preconceptions from which so many adults suffer. Too many times in Japan I have heard the complaint that Kabuki is difficult to understand because the language is old and the stage conventions are strange. But for many children this is not a problem. For many, Kabuki has the power to spark their imagination, providing an unending source of excitement and wonder.

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私の場合、7歳の時に初めて歌舞伎を観ました。休暇中、両親が3日間東京に連れて行ってくれたのです。博物館の中にはない、本物の生きた日本文化を経験したいということで、歌舞伎を観ることになったのでした。その時に観たのは『金閣寺』と『鏡獅子』だったと思います。言葉はわかりませんでしたが、子供ながらに受けた衝撃はずっと心に残っています。

In my case, I first saw Kabuki when I was 7 years old. My parents took me on holiday to Tokyo for three days and decided to see Kabuki because they wanted to experience authentic Japanese culture that was outside a museum. I think we saw ‘Kinkakuji’ and ‘Kagami Jishi’. Despite not understanding the language, for me as a child, the impact of that experience has remained with me all my life.


初めての歌舞伎を大変楽しんで、その後、両親は私が13歳の時に再び東京に連れて行ってくれました。この時は歌舞伎座で六世中村歌右衛門の『隅田川』を観ました。母の隣に座っていた私は、母が泣いているのに気がつきました……黙って、静かに……。歌右衛門の演技の迫力が、母を深く感動させました。舞台上にいる母親・班女の前の感情が、客席にいる母親・私の母の心に直接響いたのだと思います。母は中国の北京で生まれ、長年、京劇好きでもあったので、演劇特有の言語のようなものにも馴染みがありました。

Having enjoyed it so much, my parents took me back to Tokyo when I was 13 years old. This time, we went to the Kabukiza and saw Nakamura Utaemon VI in ‘Sumidagawa’. Sitting next to my mother, I noticed that . . . silently . . . she was crying. This was because Utaemon’s performance was so powerful that she was deeply moved: the emotions of the mother on stage, Hanyo-no-mae (班女の前), struck my own mother in the auditorium directly. My mother was born in Beijing, China, and was a lifelong fan of Peking Opera, so the special language of the theatre was very familiar to her.

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浮世絵との出会い

一方、父は英国出身です。英国には、シェイクスピアの他にもたくさんの劇作家たちによって作られた豊かな演劇の歴史があります。父は芸術家でもあり、日本の浮世絵を少し集めたりもしていて、その中には歌舞伎俳優を描いた役者絵もありました。私と歌舞伎との最初の出会いは、実は舞台を観る前にすでにあったというわけです。

My father, on the other hand, was from the United Kingdom, which has its own rich history of theatre in the plays of Shakespeare and countless other playwrights. My father was also an artist, and he had a small collection of Japanese woodblock prints, including some Kabuki actor pictures. Therefore, my earliest encounter with Kabuki actually occurred before I ever saw it on stage.

初代歌川豊国 「寺子屋」 寛政八年七月 (1796)、都座

初代歌川豊国 「寺子屋」 寛政八年七月 (1796)、都座

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