イヤホンガイド【観劇に+αの楽しみを!】
歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #19
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歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #19

イヤホンガイド【観劇に+αの楽しみを!】

イヤホンガイド解説者たちが、歌舞伎や文楽の魅力にハマった経緯や芝居への愛を語るシリーズ「歌舞伎の沼からこんにちは」。

今回は辻󠄀陽史さんがご担当。もとは○○の沼の住人だったようです。歌舞伎にハマったきっかけは何だったのでしょうか?!どうぞお楽しみください!

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文:辻󠄀陽史

もとは演芸の沼の住人

歌舞伎にのめり込む前は、落語好きであった。
「笑いの文化」がある大阪に住む私は、小学生の頃から、あちこちの落語会に通ったり、テレビで放送される落語番組を観たりと、落語漬けの毎日だった。

関西の落語は上方落語といい、噺の最中に「ハメモノ」と呼ばれるお囃子が入る落語が多いのが特徴である。そのハメモノ入り落語には、芝居好きの人物が『忠臣蔵』、『義経千本桜』、『娘道成寺』といった歌舞伎演目の名シーンを真似する、「芝居噺」と呼ばれるジャンルがある。その賑やかで楽しい「芝居噺」が私は特に好きであった。ただこの時、その芝居噺に出てくる、本家の歌舞伎は一度も観たことがなかった。

ある時、道頓堀にあった「演芸の浪花座」の帰り道、ふと大阪・松竹座が目に入った。一緒にいた母親に、私は「あの国会議事堂みたいな建物はなに?」と尋ねた。「松竹座のこと?あそこは歌舞伎をやっているところ。」と言う母親の言葉に、私は、あの「芝居噺」に出てくる“歌舞伎”がいったいどんなものか、観てみたくなった。そして、帰り道のコンビニで、五月大歌舞伎のチケットを買ってもらった。

あの時と同じ場所から撮った松竹座

間近で観た舞台に魅了され

初めての歌舞伎鑑賞は、2000年5月大阪・松竹座五月大歌舞伎であった。イヤホンガイドを手に、座席へ。席は、一階4列目の一番上手。舞台はすぐ目の前。定式幕が引かれた中から聞こえる柝の音に、ワクワク感が高まった。
一幕目は『実盛物語』。中村富十郎丈の実盛であった。今でも記憶にあるのは、花道の引っ込み。馬に乗った実盛が扇を広げ、キマリ、柝がチョン。この実盛がまことにかっこよかった。そして、馬もよかった。馬が誰かは分からないが、「馬が本物の馬みたい!馬の“中の人”すごいな!」とそんな感想を持った。

『実盛物語』といえば、実盛が、葵御前に向かって、小万の片腕を切った話を語る“物語”と呼ばれる部分が眼目だが、まだ中学生の私には、“物語”より、馬に乗ったまま、あの細い花道を引っ込んでゆく姿が印象に残った。

そのあとは常磐津の舞踊『勢獅子』。こちらは、中村梅玉丈、市川染五郎丈(現・松本幸四郎)の鳶頭による獅子舞、立廻りがあり、華やかな舞台で、楽しい一幕だった。
当時、『勢獅子』のイヤホンガイドで、記憶が正しければ、「常磐津では、朱色のたこ足見台を使われるのが特徴です」という内容の解説があった。この解説がきっかけで、役者の演技だけでなく、歌舞伎の音楽にも興味を持つようになった。

舞台に近いところで、迫力ある役者の演技を観ることができたこと、イヤホンガイドのおかげもあって、ひじょうに楽しい、はじめての歌舞伎鑑賞となった。

猿之助の『義経千本桜』

幕間に「番附」(東京でいう「筋書」)を見ると、今後の公演ラインナップ―9月 市川猿之助 通し狂言 『義経千本桜』と書いてあった。隣に座っていた母親が、「これは絶対見たほうがいい!」と興奮気味に言ってきたことで、昼の部を観終わらぬうちに、9月の歌舞伎観劇が決定した。

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