歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #8
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歌舞伎の沼からこんにちは。~私はこうして歌舞伎にハマった~ #8

みなさま、こんにちは!2021年も「イヤホンガイド解説者のひろば」では解説者から溢れる歌舞伎愛・文楽愛をお届けしてまいります。どうぞお付き合いくださいませ。

記念すべき2021年一発目は、シリーズ「歌舞伎の沼からこんにちは」。

三浦広平さんが学生のころの観劇風景をお話します。懐かしさを感じられる方もおおいことでしょう。ちょっと客席やロビーの風景をおもいだしていただければ…。

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文:三浦広平

まくら、のようなもの

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「どうらく、というヤツは道を楽しむと書きますが、中にはその道に落ちてしまう人がいる。こちらの方が、どうかすると本当の「どうらく者」のようでして…。」

と落語のイントロ、まくらにはこんな語り出しがあります。イヤホンガイド解説なんてことをしているからには大なり小なり、この “どうらく”要素があるとは思うんです。

しかしわたしは他の解説者のお歴々と違いまして、ご家族が芝居好きだとか、幼い頃に見たあの役者、学生の頃のあの舞台にたちまち心を奪われたとか、この連載のタイトル「沼にハマった」というようなきっかけが、パッと浮かんできません。

ただ思い返しますと、祖父母の家に行けば、当時はご老公が西村晃の『水戸黄門』ですとか、これぞ昭和の男前といえる加藤剛の凛々しい『大岡越前』を、じいさんばあさんの膝の上で見てました。またお酒のCMだったか、十二代目市川團十郎が『勧進帳』弁慶の飛び六法をしていて、これが妙に面白くてやたらと真似していたり、という思い出があります。

昭和50~60年代はそんな具合で、まだ歌舞伎的なものと世の中の距離がそんなになかった気がしますね。で、のちのち歌舞伎に親しむという意味では、時代劇の存在がありがたかった。大河ドラマも今ほど分かり易い言葉遣いではなくて、小中学生の自分にはなかなか難解でした。でもそのおかげもあってか、特に新歌舞伎(※)あたりのセリフには、最初からそこまでのとっつきづらさを感じませんでした。

※明治の末から昭和初期に書かれた当時の新作歌舞伎。古典と比べてセリフなどに近代文学的な影響を感じる作品が多い。


初めての歌舞伎の記憶

さっきも言いましたように、家族は歌舞伎に興味がありませんでした。それでも両親は昭和20年前後の生まれですから、日常会話に「遅かりし由良之助」なんてフレーズ(※)が出てきたり、休みの日には浪曲のカセットテープ(CDなんてなかった!)を聴いてました。当時の親は40歳手前くらいでしたが、今の同年代にそんな日常を送る人はナカナカいらっしゃらないでしょうかね。

※『仮名手本忠臣蔵』四段目で、切腹する塩冶判官が「由良之助はまだかまだか」と待ちかねるところから派生した、到着が遅いことをからかう言い回し

初めての歌舞伎は、解説者の中では遅いほうでしょう。平成4(1992)年6月、国立劇場歌舞伎鑑賞教室へ、高校の団体観劇で連れていかれました。演目は『青砥稿花紅彩画』で弁天小僧が八十助、後の十代目坂東三津五郎でした。いつもはカットされることの多い蔵前の場もついて、もちろんイヤホンガイドもありましたから分かり易かった…んですが、申し訳ないことに舞台の記憶はほとんどありません。後年の三津五郎にはあれこれと思い出が尽きないんですが…。

ただ、市村鶴蔵の演じる番頭、これが実に面白かった!あのとぼけたセリフ回し、飄々としたおかしみはよく覚えてます。

振り返れば、初めての歌舞伎から脇役さんに興味を持ったってことになるんですが、この辺りのお話はなかなか長くなるので、またなにかの折にご紹介できれば…。


レジェンドの舞台に触れて

で、わたしは学業にいそしむ優等生でしたから、わざわざ浪人して大学へ入りまして。ここで歌舞伎研究会なるサークルに入ってしまったんです。でも、そんなに強い関心があったわけじゃあない。文学部でしたが、当時は三島由紀夫の小説が好きでしたから、「そんな勉強でもして出版社にでも入れればいいかな…」というくらい。もちろん三島が歌舞伎を書いていたなんてことは、ちっとも知りませんでした。これを書くのは本当にお恥ずかしいんですが、「新入生は一回観劇ご招待します!」って勧誘、これにやられてしまったという次第。我ながらなんて不純なのかと…義太夫の語りなら 〽呆れ果てたるばかりなり… ってやつです。

人生二度目の歌舞伎は平成7(1995)年5月、歌舞伎座でした。『義経千本桜』の昼夜通しは松竹百年記念ということで、今にして思えば豪華な配役でした。

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